『Cat in the Rain』by Ernest Hemingway ③
『Cat in the Rain』by Ernest Hemingway ③
彼女は、ホテルのオーナーを好ましい人物だと思っていた、そう思いながらドアを開けて、外を見渡した。
雨は一層強く降っていた。
ゴムのカッパを着た男が空っぽの広場を渡って、カフェの方に向かって来ていた。
あの猫は、右手の方にいるだろう。多分ひさしに沿って行けるだろう。
入り口の方で立っていると、彼女の背後で傘が開いた。
夫婦の世話をするメイドだった。
「濡れるといけません」と彼女は笑いながらイタリア語で言った。
もちろんのこと、ホテルのオーナーが彼女を差し向けたのだった。
傘を彼女の上にさしかけながら、持っている状態で、妻が砂利道を自分たちの部屋の下に着くまで歩いて行った。
テーブルはそこにあった。雨に濡れて鮮やかな緑色を放っていた。だが、猫は去っていた。
妻は急に失望感を覚えた。
メイドは彼女を見上げた。
「何か無くされたのですか?」
「猫がいたのよ」と若いアメリカの娘が言ったのだ。
「猫でございますか?」
「そうよ、猫がいたの」
「猫ですか?」とメイドが笑った。「この雨の中、猫ですか?」
「そう、そこのテーブルの下に」
そして、こう言った。「あぁあの猫が欲しかったの。子猫が欲しかったのよ」
妻が英語を話すと、メイドの顔が怖がった。
「行きましょうシニョーラ」とメイドが言った。「中に戻らなくてはいけませんわ、濡れてしまいます」
「そうね」と若いアメリカ娘は言った。