雑記

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『俺様のマーニー 〜マンガ家編〜』

「聞いてくれマーニー!ボク、マンガ家になるよ!」

 

 お兄やんは25歳で突然そう言い出した。もちろん、この手のお兄やんにはよくあることで、つまりは一週間でその夢とやらは幻になった。

 

 

・・・それから五年が経とうとしている。

 

「ボク・・・絵、描けない・・・絵さえ上手になったら楽勝さ!あっもちろん漫画家さんのご苦労はわかってる。だから表向きは尊敬しているフリをして、ひっそりと目指していることにするんだフフフ。そうすれば恥ずかしい思いもしないですむでしょ!ボクって賢いな〜」

 

「お兄やん、どういうストーリーにするの?プロットは?キャラ設定は?そもそも何を伝えたいの?」

 

「んー?マーニーはうるさいなぁ。そんなの、ボクの頭の中に全部入ってるさ!何を伝えたいかは、そりゃ、この世界についてさ!人間の真理さ!ボクは30歳に差し掛かってそれが分かってきたんだよ!それを伝えるのさ」

 

 

「お兄やん、古代ギリシャから続いてきた哲学に詳しかったっけ?文学は?あれ、資本論読んだ?ええ!?最新宇宙論はおろか、相対性理論もわからないの?えっそれなのに世界や人間の真理とか、イタイにも程があるよ・・・」

 

「おいマーニー!うるさいぞ!何を東大のくそ教授みたいなこと言ってるんだ!教養なんて古臭い」

 

 「古臭いこと言ってるのお兄やんだよ」

 

「・・・とにかく!ボクはボクの感性を信じているんだよ。直感さ」

 

「(バカの直感ほど、無価値で醜く恐ろしいもの、はない・・・)」ボソ

 

「ん?なんだいマーニー」

 

「なんでもないよ!じゃあ今日から死ぬ気で頑張ってねお兄やん!」

 

「おう!明日、本屋に行ってデッサンについてのハウツー本買ってくっから!手先の器用な俺様なら楽勝よ!」

 

「もうずいぶん歳とってるけどね!」