I can help me.
「眠たいから、わたしの代わりに学校行ってきてよ」
「いいよ。制服借りるね。夏服だったね」
わたしは、わたしXだとすれば、Yもいるので、毎日どちらで行くか選択します。
この裏ワザは、この春習得した。
選択するホスト役はXなので、Yは影武者というかスペアモーターというか、寝床も机に追いやっています。
その代わりと言ってはなんですが、掃除洗濯及び家事全般はわたくしXが担うことになっております。
「学校には、8時20分に着けば問題ないんだよね?」とわたしXがベッドの中でゴロついている横でYは制服の襟を整えながら訊ねてくる。
「そうでーす。チャリの鍵はそこね。あっエミリに借りてた漫画はそこ!ありがとうって言っといて」
「お礼ぐらいい自分で言いなよね。一瞬で繋がれるんだろうお前の世界は」
「なによそれ」
Yは時折、大時代のような口調になる。
「それじゃあ行って参る」
Yが帰ってきた。えらく疲弊している。
「おかえり、なんかあった?」
「ただいま、なんかって?」Yは制服を脱ぎ捨てて下着姿である。わたしよりはるかに巨乳である。無論、バストのみならず身体全体が豊満だ。
「朝は、間に合った?」
「うん」
「授業は、ノートとった?」
「うん」
「発言、一回はした?」
「ううん」
「なによもう。あっエミリは?怒ってた?」
「ううん」
「そ。よかったわ」
Yは虚脱してテーブルにつっぷしている。
「コーヒー飲む?入れてこようか」わたしが訊ねた。
Yは頭をこくりとしただけで、わたしはその態度にイラっとした。
わたしては部屋の扉をちと強めに閉めて階段を重い足取りで降りリビングで麦茶をがぶ飲みした。
「まただーまただーはっ!」
突然首の襟元から白装束の小人が這い出てきた。ひとり、またひとり。三々五々と出てきて、わたしの顔からへその辺りまで十匹くらいが集まった。ちょうどタマゴくらいの大きさだから、けっこう迷惑。こいつら、いちいち。
「なに苛立ってるんだよ!学校、代わりに行ってもらったんだろう?はっ」
リーダー格の一匹が鼻先にしがみついて、わたしの目を指差しながら言ってきたので、わたしは余計に腹が立った。
「それだよそれ!はっ」
「なんなのよ、いつもいつも。大体ね、いいじゃないのよ、わたしだけの問題でしょ?誰に迷惑かけてるっていうのよ」
わたしはそう言いながらも、なにか間違っている、という気分が背筋に流れていることに気がつく。
「それはちょっと違うよね、そうじゃないよね。はっ!」
リーダーがまた云ってくる。
わたしはなぜか晴れ晴れした気分で部屋に戻った。
「えっコーヒーは?」
わたしはYに笑ってみせ、もう一度コーヒーを取りに戻ってそのあと一緒にテレビを見た。
毎年、夏になるとこのような日々がやってくるのだ。きっとみんなにもあるはずだ。