『俺様のマーニー 〜小説家編〜』
お兄やんは今年で30歳。都合の良い時だけ大人のツラをみせて、雰囲気悪くなったら手のひら返してイノセントボーイを演じる最もタチの悪い種族になっていた。
「聞いてくれマーニー!ボク、小説家になるよ!」
これからご覧になられる方の周囲にも、お兄やんのような人間が(実は)たくさんいるはずだ。
「なんで?お兄やん」
「なんでって、表現者になりたいんだ!ボク、アーティストになりたいんだよ!」
「だから、なんでよ。なんで小説家なの?お兄やん、そんなに小説読んでたっけ?漱石鴎外泉鏡花から大江健三郎まで・・・英文学はシェイクスピアから?ガルシアマルケスは?トーマスマンとか?ドストエフスキーはどう?」
「・・・読んでないよ・・・でも、いいだろ!なんだよ、読まなくったって書けるに決まってらぁ!啓蒙主義なんてゴメンだぜ!それに、読んでなくても小説家になったやつなんてたくさんいるでしょ!ボクもその一人になるの!」
「その自信は一体全体どこから湧き出てくるのよ・・・」
「だって、マーニー、オレにはちゃんと伝えたいことがあるんだぜ!この不条理で狂った世の中の実態を伝えるんだ!・・・・・・っつっても、別に世界を否定しているわけではないんだぜ。普通に生きている人は、うん、素晴らしい!そういう人と、その、喧嘩するつもりはないんだ・・・」
「自意識の中で悦に入ってる時点でいろいろと消化されてると思うよ。昇華なんてかっこいいもんじゃないよ、うんこシッコになってトイレに流れてるよ」
「いや、別に、歴史に名を残すような人間になりたいわけじゃないんだよマーニー。ボクはただ、ボクの思いを今の人たちに伝えたいだけなんだ」
「お兄やんはつまり、誰でも思いつきそうな自分のひねくれた主義主張を散文にもならないゴミ文にしてそれを商品にし、共感してくれる人だけに買ってもらって、Amazonレビュー総数20件くらいで✩平均4.5のニッチな人気者になりたいってわけね」
「そ、そんな・・・ちがっ」
「違う?違うの?匿名で人の悪口ばっかり云って妬み恨みを他人にぶつけるアイツ等とはボクは違う、って云いたいの?そうね、違うわね。あなたは、アイツ等以上に扱いにくい。そして危ない存在よ?」
「・・・ははは。危ない、か。そうかもしれないな・・・」
「それよ!あなたは何から何まで勘違いしているわ。あなたは、危険でいることが人とは違った魅力であると思っているけど、それはただの迷惑者よ」
「・・・はは。迷惑、か。そうかもしれないな・・・あとは、死ぬしかないんだな」
「お兄やん、死ぬ勇気もないくせに。軽々しく命もてあそばないでよ」
「おい!マーニー!お前こそなんだよ!人形のくせしていい気になりやがって。ぶち殺すぞ!お前は!オレの何を知ってるってんだ!」
「知らないよ。だから、云いなよ。本当の告白をしなよ。顔出して、勇気出して、本当の誰かに会って目見て伝えなよ」
「・・・・・・だから、こうして、コクハクブログを・・・」
「甘ったれたこと云わないでよ。小さな告白が如何に無駄なことか、お兄やん自身が一番わかってるでしょう?」
「マーニー・・・じゃあ、ボクはどうしたら・・・ボクの人生はどうしたら報われるんだい?」
「こっそりこっそり自分探ししてたのがいけないんだよ。この恥知らず!」
「マーニー・・・」
お兄やんは、もう夜も深いというのに、音楽を聴きながらひっそりとコンビニへ行ってしまいました。
次回も乞うご期待!