雑記

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『春を売る前』/祝♡初☆短編小説投稿作品!

novelcluster.hatenablog.jp

 

始めて参加させていただきまシュ!

 

何かしらの爪あとを残すべく、ちょっとエッチな作品書いてみました!

 

自分で言うのもおこがましいこと甚だしいのですが、じっくり読んでいただければ幸いです☆

 

(ギリギリ投稿でごめんなさい、推敲していました・・・)m(__)m

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             『春を売る前』  

                   4941字

 

 男はずるい。

 悩み話はつまらないのに、理想の描き方はわりと現実的。

 女はその逆。

 

                  *

 

 あっもう私のクラスの番だ。最後のG組だから、それまでには治まると思ってたけど、今日という日はさすがにお盛んね。

 

 二十七番なんてあっという間に来ちゃうだろうなあ、まずいなあ。そもそも『竹内』で二十七番ってどうなの?遅すぎるでしょ。どんだけ『あ・か・さ行』の人間で固めてるのよ先生。エッチしたい子でもいるのかな?オカズにしてるのかな?いずれにしても、先生もお盛んなこと。この代の最後の一年間、自分好みのJKでクラスを構成したのは構わないけど、よくこんなムチャな人選ができたな、恐るべし『ドンファンのヒデキ』。

 

 清水さんなんてまさにって感じ。卒業式なのにあんな髪の色しちゃって、まあ胸は板だしそんなに顔立ちがいいわけじゃあないけど、化粧栄えする感じね。あとは太もも出しときゃいいんだから、女ってほんと楽ちん。最近はナチュラル志向なオヤジが多いからね、無理してケバくする必要もない(薄化粧はそれはそれでテクがいるんだけど)。女はただ大人しいガキっぽくしていればいいからホントに楽ちん。そもそもナチュラル系・清楚系が良いってただのロリータコンプレックスやないかい。

 

 小池さんは大人しいけど、すっごくエッチな体つきしてるよなあ。ふふ、黒髪ロングで艶っぽくしちゃって、実は男子から『南高のマリア・小池』で通っていること自覚してるんでしょ?それにあの太もも!ちょっ今日丈短すぎない?やだなあ小池さんも、私と同じなんじゃないの?無理無理、我らが南高の男子はうぶが多いから、自分からイクしかないよ。

 

 ヒデキは教壇の上から着席状態でノーガードな私たちの太ももを見て視覚野を賦活させて海馬に記憶したあと妄想の限りを尽くしてトイレでシコってたんだろうなあ、短そうだけど(二重の意味で)。でも世良くんと塚本くんは、長いんだろうなぁ、おっきいんだろうなぁ。あ・・・・・・やばいまただ・・・・・・もう回ってきちゃうよーもう二列前の人たち立ってるよー、あと五分くらい?それで乾くわけ無いじゃん。というかべったり座ってんだから何時間待とうが乾くわけ無いじゃん。立った時に垂れちゃったらどうしよー。なんでよりによって隣が世良くんと塚本くんなんだろう?わが校指折りのイケメン世良くんとは一年生のときに同じクラスになって以来ずーとお世話になってるけど、まさかこの塚本くんにもじとっちゃうとはねー。だって塚本くんだよ?テニス部とか南高的にはそんなに華は無いし、その中でも別に「主力系」ってわけでも無いし。ツイッターもやってないからその嗜好もよくわからん。いやきっと匿名でやってるんだろうけどさ、それはそれでちょっと面白い。だってエッチなことくらいしか頭にないんでしょ?特にこういう人って・・・・・・でも塚本くんも私をオカズにして抜いたことあるのかな?あるよねそりゃ私けっこう可愛いしおっぱいもおっきいしそのわりにはおとなしいキャラってもう男子諸君のヴィーナスことうけあいって感じね☆

 

 ・・・・・・世良くんはどうなんだろ?世良くんは私で抜いたことあるのかな?いやそもそも私なんて眼中に無い、なんてことは無いね!私可愛いし。絶対世良くんも抜いてる。あ!・・・・・・やばい・・・・・・そんなこと考えてたらまた。

 

 「私高校出たら働くし。Kと同居。えっ籍は入れないよ!とりあえず、家出たいの。」

 なんて言ってた里美さん。返事でかいし。家出たいのはわかるけど、よく高卒で社会に出れるな、感心する。いや、ただ無鉄砲なだけかもな。

 「卒業したらソッコー子どもツクルし!」

 とか云うてたし。大人って無責任だから、こういう若者を賞賛したがるのよね。なんかリベラルなこと云ってる気になってるんでしょうけど。一方で、いざ現実となると、やっぱり普通のことしか云えないのよ、大人って。「やっぱりね」って。

 

 「清水さくら」

 「はい!」

 はい、もう私の列ね、もう立つのね。ちょっと早いよ世良くん、そんなに急かさないでよ。ってあれ?あんまり濡れてないや。

 

                 *

 

「リホー打ち上げ五時集合だよー!」

「はいよー四時半には行くからーってかその前にはLINEするわぁ」

「ほいよー」

 

 卒業式が終わって恒例のアルバム書き込み&写真撮影がクラスをまたいで校内が鼎(かなえ)の枠がごとし、私は必要最低限の事を済ませて「ごめん彼氏待たせてるんだ」と荷厄介な態度を示し友と打ち上げまでのしばしの別れを告げ、喧喧囂囂たる教室を出た。

 

 ああ、もう一生会わない人たちもいるんだろうな、と、突然世界が変わったように静かになった階段を降りながら、いけ好かない気分になった。別にしんみりしているわけじゃない。学校って変なとこだなという懐疑のるつぼに吸い込まれるような、そんな感じ。

 

 とりあえず今私の脳内の大半を占めるのは校門を出て東に三〇〇m進んだ処にあるショッピングモールで今か今かと待ちくたびれているサトルの存在であった。齢一つ上のサトルは晴れて浪人の身を脱し、「卒業まで待ってね」と今思えば理解し難いヴァージンの漫画的契約を私と取り交わしたがついにそれが本日三月一〇日に破棄されるとあって、もう股間がうずつくどころではないだろう。そんなことをつらつら言葉にしながらも、その裏側といいますか、意識下といいますか、なんとなく渦々している気分が、田舎の夜道にひっそり佇む信号機が点滅しているように私の脳だか心だかとにかくどっかしらの神経細胞が働いているよう。

 

 ショッピングモールに隣接された公園は平日の昼下がりとは思えない(昼下がりだからか?)大量のガキで溢れかえっている。子どもの安全を考慮してか、遊具は滑り台が一台あるだけで、虚しい砂場や芝生の周囲を背の高い木々が埋めている。

「桜じゃないのかい」

 春だけの公園ではないが、花見用の桜を埋めといてもいいだろうと思わず独り言を言ってしまった。きっと没個性な安定した木がいいのだろう、と役所のおっさんみたいなことを考えていた。

 

 公園を突っ切って行くと、嫌でも子どもが近寄ってくる。芝の香りと、なんだか子ども立ちの香りもしているようで、案外悪くはなかった。

「いひー!」「だぁ!」「んねえー!」etc・・・・・・基本的に擬声語でやり取りをする彼らを見て、愚かしい生物だと笑いそうになった。子どもって、可愛いから可愛いんじゃない。愚かしくて無能で醜いから可愛いんだ、キモ可愛いって子どものことだ!

「ね~みて~!ね~!」悦に浸っていたら子どもが近寄ってきた。もう出口に近いから無視してやろうかと思ったけど、母親が走って追いかけてくる姿を目にしたら、なんでか相手にしてやろうと咄嗟に思った。

「んー?なにそれー?」我ながら吃驚仰天の対チャイルドワードに肝をつぶす。

「・・・・・・!」ニコニコしていながらも、しかし黙りを決め込む小僧にどうしていいかわからず、私は腰をくの字に折ったまま小僧が握っているウンコとしか形容できない泥んこを見つめていた。

「どうもすみませ~ん、ほらあレンくん謝って!ごめんなさ~いして」

 

 暑い。まだコートが手放せない時期なのに、煌々と陽光が差してきて、暑い。

 

 推定二八歳のママ、こんな昼間からダークブラウンの髪の毛巻いてレンくんと公園で愉しそうですね。夫があくせく営業に奔走しているというのに、今どき専業主婦面ですかい。「朝は夫の朝食とお弁当、洗濯機を回してレンくんを起こしてそれからそれから・・・・・・」なんて無しですよあなたが選んだ結婚と出産でしょうが。

「ははっ。それじゃ」なんて笑顔振りまいて立ち去った。胸の辺りが少し熱くなっていた。額にも汗が少しだけ浮かんでいる気がしたけど、ショッピングモールへとつづく木陰を歩くうちに、そんなことも――レンくんのこともすっかり忘れていた。

 

                  *

 

〈どこぞや?〉

〈入り口ベンチに座ってるいつもの〉

〈もう着くよ☆〉

 

 LINEでのやり取りはいつも通り。推薦で大学に行く私には合格発表の喜びを想像し難いけど、もう少し喜んでるっぽい文脈を送ってくるべきなんじゃないかねサトル氏。私は(いつも通りだけど)☆を添ええてやってるんだからさ。それとも何かい?やっぱりエッチがしたくて堪らないのかね?

 

 という顔をしてサトルは、人が忙しなく出入りする自動ドアの横のベンチに座り、肩を丸めてスマホをいじっていた。髪、整っている。服も、なんか新しい。

「おーい待たせたな☆」星マークが溢れんばかりのツンデレ系声帯モードで話しかける。

「おお!いやいや・・・・・・卒業おめでとう!」大事な大事なスマホをポッケに閉まってサトルはそう云った。

「うーん、それよりあなたがおめでとうでしょ?S大でしょ?すごいじゃん」

「浪人生におめでとうはやめてくれよー。ってか入ろうよ」

 始めてだ。何度も一緒に通ったこの自動ドア、いつも私から入ってたのに。

 

 サトルはいつもより早い足取りで歩いていた。靴も、新調している。いつもコンバースのALL STARしか履かない、履けない男だったのに、何故急にブーツなんだ?ホテルに行ってすぐやりたいなら、それこそ脱ぎにくいじゃない。それとも、男って、こういうときは見栄張ってみたりするのかな?

 

「どこイクの?」「ちょっとー」「平日なのに混んでない?」「駅前だからね」なんてとりとめもない会話をしながら、無数の大人の女性が前から歩いてきては、後ろへ通り過ぎていった。

 

 サトルが目指していたのは書店だった。なにを云うわけでもなく新刊書、実用書、雑誌のコーナーに目もくれず、ぐんぐん奥の方へ向かっていった。たどり着いたのは理工学系の本が並んでいるコーナーで、その辺りを少しきょろきょろして『建築』の棚の前でピタリと足を止めた。

「予習。浪人生はただでさえバカにされますから」

建築学の基礎のキソ』という本をパラパラ捲りながらサトルは云った。私はただ「偉いじゃん」としか云えず、そして、そこで何かを悟った。

 

 サトルは結局『建築家の人生設計』という本を買った。その後も大学の話がほとんどで、たまに私の行く家政大学の立地の話や立ち並ぶお店の商品にツッコミを入れたりするだけだった。

 

「これから打ち上げがあるから」と云って、私はサトルと別れた。「そうかー。三月三一日までJKだもんね」とだけニコニコしながらサトルは応えた。

 

                 *

 

 私はそこから学校の方へは向かわず、家へと踵を返した。道中のコンビニに入って迷わずトイレへ駆け込んだ。

 

 鍵を閉めるとほぼ同時にスカートとパンツを下ろして、立ったままドアにもたれながら、オナニーをした。塚本くんと世良くんとサトルと、その他諸々の思いつく男子――それこそさっきのレンくんだってたまに思い出しながら、指をグリグリ動かした。

 

「売春ってのも、わからなくなーいかな。『三月三一日までJKだもんね』」詩の一遍でも書けそうだと思った。

 

 私は、サトルじゃ無くても良いわけだ。それは誰にだってある、よくある感情だ。でも、その本質をなんとなく感じてしまった気がする。私は――おそらく女という生き物は――性的な欲求を身体中に、それこそ気功のように身にまとっている。身体的欲求とも言えるのかもしれない。そして、その膜に、少しの間でも――私は一週間くらい――、適当な男が――その男も同じようにまとっているであろうその膜を、触れていてくれさえすれば、それでよいのだ。

 

 でも、男はずるい。その膜を当たり前のようにわかっているし、当たり前のように一箇所に凝縮させて、方向性を与えて、つまりベクトルのように自在に扱うことができる。そのくせに、都合が悪くなったり暴走し始めたら、ポイって。タバコの吸殻落とすみたいに、「トっ」て捨てる。

 

 女は、そのベクトルが持てないの。矢印が持てないの。それはよく、母なる大地と喩えられる。

 

 私はそこでもう一度オナニーをして、ディズニーランドのガイドブックとコンビニ特製北海道風つけ麺とコンビニ特製モンブランとダイエットコカコーラと、会計中に目についた唐揚げ棒を買って、一六九二円の会計を一万円で支払って八枚の千円札(五千円札を切らしていたようだ)と三〇八円分の小銭を返して貰って、誰もいない家に帰ったのだ。打ち上げまでの、しばしの間。

                      ――了